応援する気持ち

大好きなご主人様を失った犬たち【後編】

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運動会が始まりました。

 

各チームに分かれて、それぞれの遊具で全ワンちゃんに遊んでもらい、

全員遊べたチームから順位をつけていくそうです。

作ったときの順位と遊んだときの順位を総合してチーム順位を決め、

最後に発表するとの事。

 

私は、順位なんてもうどうでも良くなっていました。

 

クロちゃんと仲良くなる。

出来れば、しっぽを上げて走り回ってほしい。

 

その思いが強くありました。

 

私はクロちゃんのペースを待っていました。

 

“あの遊具で遊んでみようか?”

 

そう話しかけても、おふせをしたまま動こうとしないクロちゃん。

私も横で座っていました。

二人で、他の犬たちが遊ぶ姿を見ていました。

 

“クロちゃんが知っているお友達はこの中にいるのかなぁ?”

 

なんて、日本語で話している自分がちょっと面白く感じていました。

だって、周りの人はわからないんですもの、日本語。

 

調子に乗って、色々話しかけてみました。

今思うと、クロちゃんは日本語を聞くのは多分初めてでしょうね(笑)

 

ひとしきり話し終えたら、自分たちが最後な事に気づきました。

 

“そろそろ、遊んでみる?”

 

そう話すと、不思議な事にクロちゃんも動き出しました。

他のチームは殆どが終わっていましたが、

まったりのんびり、二人ではしごを渡っていきました。

でも、怖かったのか、彼は途中で降りてしまいました。

 

“はい、OK!”

 

勝手に決めて、終わったことにしちゃいました(笑)

クロちゃんとの友情にヒビを入れたくなかったので!

 

想像通り最下位でゲームを終え、

次は散歩に出かける時間となりました。

 

施設の門から外へ出て、ご近所を一周30分程歩くコースです。

時折来る車や、動物たちに対する注意を聞いたら出発です。

 

“さぁ、クロちゃん。待ちに待った散歩だよ~。

一緒に外の世界に出てみようね!”

 

そう言って出たのですが、

またしっぽを下げて私の足に絡み付いてきます。

 

“怖いのね。分かった、少しだけ抱っこしてあげる。”

 

そう言って、抱っこをして少しだけ歩いてみました。

 

“ほら、楽しいんだよ。 お散歩だよ。

みんなお友達も歩いているよ、ひとりじゃないんだよ。”

 

そっと、抱きかかえていた位置を低くして、立たせてあげると、

なんと、歩き出したのです!!!

 

仲間のワンちゃんたちの側によっていき、元気に歩き出しました。

リードを持っている私は嬉しくなり、どんどんスピードを上げていきました。

 

“楽しいねっ、クロちゃん!”

 

いつしか、クロちゃんのしっぽはピンと立ち、元気に左右に振られていました。

 

それを見た瞬間、なんだか涙が出てきました。

 

 

“きっとこの子は、ここへ突然連れてこられて、

そして、ボランティアの方々の愛情をたくさん受け、

たくさんの時間をかけて

人間への不信感をゆるめて来たんだろうなぁ。

突然ひとりぼっちになった時は寂しかったよね。

でも、ここにはたくさんの仲間がいるから寂しくないよね。

ごめんね、クロちゃん。

自分勝手な人間を、許してね。

そして、遊具でたくさん遊んでね!“

 

そんな思いが込み上げていました。

 

・・・散歩が終わり、いよいよお別れの時間。

ホテルへ帰るためのバスが到着していました。

 

ワンちゃんたちとボランティアの方々に笑顔で見送られ、

私はバスに乗り込みました。

 

帰りのバスの中では、皆が同じ思いなのか、

それとも炎天下での長時間の作業が疲れたのか、

みんな黙っていたのが印象的でした。

 

ちなみに、私のチームの順位は下の方~でした。

はっきりとは覚えていません。(笑)

 

その翌日、あの災害が起こっていたのでした。

 

私はその日、日本に帰るためプーケットから空港のあるバンコクに移動し、

荷物を預けるために寄ったホテルのロビーで、

信じられない日本の光景を目にしたのでした。

 

人に捨てられてしまったワンちゃん。

そのワンちゃんのためにボランティア活動をする人たち。

未曽有の災害で苦しんでいる人たち。

災害で苦しんでいる人々を助ける人たち。

 

うまく言葉でお伝えできないのですが、

 

私は『応援する人』で居続けたい、と強く思った出来事でした。

 

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コメント

  1. 北村美穂 より:

    こんにちは、いつもありがとうございます。私は幼い頃両親が共稼ぎだったので曾祖母とよく過ごしてました、そして猫のタマと。現在は猫のアレルギーで喘息が起こるので一緒に猫と暮らせませんが猫は大好きです。そして保谷にうちを建ててもらって母が仕事を辞めた頃、いつも犬が欲しいと事あるごとにねだって犬を飼って欲しくて言ってました。やがてトイプードルのコロと18年もの間一緒に過ごす事になりました。いろいろあって思いやれなかった事もたくさんあります、ですが最期まで、私たちに寄り添い頭を差し出して撫でて欲しいと寄ってきた姿が浮かびます。上田さんのお陰で私はいろんな思い出と向き合えて元気や勇気を心の中に育てています、近道は無いけど、上田さんのような方とFBでお話が聞ける。
    有難いとものすごく思いながら書いてます。震災も私には辛い思い出ですが、きっと乗り越えます、宜しくお願いします。

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